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イタリアが参画する中国の一帯一路とトリエステ慕情
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 本日は朝からずっと待っていたことがあった。それは新元号の発表で、正午前に知らされたのは「令和」である。従来の元号は中国の古典からの出典であったが、今回は国書とも言うべき我が万葉集からの出典で、言わば初の国産元号となる。評価は種々あろうが、概ね良い新元号ではなかろうか。

 

 さて、我が国の改元にゆかりのある中国だが、2013年から同国の習近平国家主席の肝いりで始まった壮大なシルクロード経済圏構想「一帯一路」が、欧州連合(EU)をのみ込もうとしている。10日前の3月23日にイタリアのコンテ首相は、イタリアを訪問中の習近平国家主席と会談し、巨大な経済圏構想「一帯一路」に参画する旨の覚書に署名した。これはG7、いわゆる主要7ヵ国では初めての署名で、中国のヨーロッパ進出を加速させ、欧州連合(EU)の分断に油を注ぐ事態になりかねないとしてEUは警戒する。

 件の覚書は30ほどの分野で経済協力に合意し、イタリアが約70憶ユーロ(約8700憶円)のチャイナマネーを得ようというもの。さらに、地中海と中東欧を結ぶ拠点となるイタリアのトリエステ港の開発に対し、中国企業が参入する。実は覚書には既にEU加盟国の13ヵ国が署名済みで、例えばエストニア・ラトビア・リトアニア・ポーランド・チェコ・スロバキア・ハンガリー・スロベニア・クロアチア・ブルガリアの中東欧諸国に加え、ポルトガル・マルタ・ギリシャも参画している。

 

 因みに、一帯一路は略称で、正式名はシルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロードだ。中国語では丝绸之路经济带和21世纪海上丝绸之路、英語では The Silk Road Economic Belt and the 21st-century Maritime Silk Roadと言う。具体的に「一帯」とは、中国西部から中央アジア(カザフスタンなど)を経由してヨーロッパへと続く「シルクロード経済ベルト」を指す。また、「一路」とは中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸、地中海を結ぶ「21世紀海上シルクロード」を指す。一帯一路の構想ルートはいくつかあるが、下図が主要ルートである。

 

 

 

 具体的には、中国とヨーロッパの間にある中央アジア・中東・アフリカの国々では、道路・鉄道・港・通信網などのインフラが不足している実情に鑑み、これらを整備して貿易や交通を便利にするのが狙いだ。この目的に必要な資金を出すため、中国は2015年にアジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立したほか、シルクロード基金と呼ぶ特別資金も用意している。要するに、一帯一路に参加する国々の間で、貿易の自由化や投資を推進することを目指しているのだ。

 

 中国が描くその戦略の核心は、一帯一路を媒介にして世界経済を牽引 or 制覇しようと言う野望であろう。よって主要国の一つと目されるイタリアが、一帯一路のメンバーになった心理的なインパクトは大きいと言えよう。一方、アメリカのトランプ大統領から関税見直しなどを迫られ、同様にアメリカの圧力を受けるEUへの接近を目論む中国の強かな戦略を垣間見ることができる。また、中国は多国間主義や自由貿易をアピールするが、これはヨーロッパが本来理念とするものと一致し、一帯一路の推進に自信を持っているようだ。

 

 今や参加国は123ヵ国まで増え拡大する一途だが、種々問題点があることも顕在化している。例えば、中国から融資を受けた発展途上国が莫大な債務を負わされ、借金の肩代わりとして土地を取り上げられるなど問題になっているのだ。特にパキスタン、スリランカ、マレーシア、ミャンマー、ジブチ、モルディブ、ラオス、モンゴル、キルギスなどでは深刻で、港湾の運営権などを中国側に譲渡する始末だ。

 今回のイタリアの参画で脚光を浴びたのが、アドリア海に臨む港湾都市トリエステだ。世界的に有名な水の都ヴェネツィアに近く、また隣国のスロベニアとの国境近くにある港町である。272ヵ国・地域を旅した私ことワールド・トラベラーは2005年3月に訪れており、その旅の模様を紹介しよう。

 

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 イタリア北東部にあるトリエステは、スロベニアとの国境まで僅か12kmに位置するイタリア東端の港町である。人口は約20万人で、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア自治州の州都だ。ヴェネツィアから東へ157km、急行電車に乗ること2時間ほどで到着した。古代ローマ時代に源を発する町の歴史は、他国との国境近くにあるため目まぐるしい変遷を遂げてきた。中世はヴェネツィアの支配下に入り、その後は第一次世界大戦までオーストリア・ハンガリー帝国の統治下で繁栄した。

 この大戦後にイタリア王国領となったが、第二次世界大戦後はユーゴスラビアと帰属を巡って紛争し、1947年には国連管理による「トリエステ自由地域」になった。その後1954年に取り交わされたロンドン覚書により自由地域はイタリアとユーゴスラビアに分割され、地域の北側をイタリアが併合して今日に至っている。複雑な歴史的背景や特殊な地理的要因により、言葉も民族も多様で一種独特の雰囲気がある。風光明媚なアドリア海に面した坂が多い港町は、イタリアの他の都市には見られない解放感も漂う。

 

 

 トリエステの市街地と港 港を散策するワールド・トラベラー

 

 東ヨーロッパとの国境にあり、歴史的に多くの民族や国家の支配を受けてきたトリエステだが、とりわけ近代で最も影響力が強かったのがオーストリアのハプスブルク家だ。オーストリアの影響を色濃く受けた街には、中世から現代に至るまでの貴重な歴史的建築物を見ることができ、特にバロックやネオクラシックの建物が多い。

 必見は、先ず街の中心にあり、優雅な建物が囲むウニタ・ディタリア広場(イタリア統一広場)である。トリエステ中央駅から海沿いに歩いて10分ほどにあり、トリエステで一番大きな広場だ。市庁舎や州庁舎、ヴェルディ劇場、旧ローイド・トリエスティーノ宮殿などの立派な建築物が広場を囲み、細かな装飾が施された建物群が美しい。

 

 広場の北側にあるヴェルディ劇場は、イタリアの大作曲家ジュゼッペ ・ヴェルディを称えて名付けられた豪華な歌劇場だ。オーストリア統治下の1801年に創設されてから現在までトリエステの文化イベントの中心となっており、世界的に有名なバレエやオペラなどの公演を鑑賞できる。建物の正面は窓や柱頭などの細かな装飾が印象的で、上演ホールのシャンデリアや天井のフレスコ画などの内装も息を呑む美しさだ。

 広場の南側に位置する市庁舎は1870年代に建てられたもので、正面にあるバルコニーはかつて独裁者ムッソリーニが演説した時に使われた。ヴェネツィア・トスカーナ・フランス・ドイツの各様式が取り入れられ、特に注目すべきは左右対称のデザインになっているファサードだ。またゴシック様式の窓なども特徴的で、中央の建物の上にある時計台は毎正時になると2 体の青銅製の人形が時計の鐘を鳴らす。

 

  

 市庁舎を背にしてウニタ・     ヴェルディ劇場

 ディタリア広場に立つ筆者 

 

 ほかに見逃せないスポットとして、ウニタ・ディタリア広場から南東約600mにあるサン・ジュスト大聖堂がある。ロマネスク様式の2つの聖堂が合体したもので、正面にはバラの形をした窓がはめ込まれている。内部はフレスコ画が描かれた天井や床のモザイクが目を引き、また傍にある15〜17世紀に築城のサン・ジュスト城からはトリエステ市内が一望でき絶景だ。

 一方、郊外ではトリエステ中心部から北西に8kmほど、アドリア海岸沿いに建つミラマーレ城がお勧めだ。19世紀に建てられた優雅な城は、外壁が白く美しいことから「白亜の城」として知られる。重厚で赤を基調とした豪華な造りになっている城の内装や、温室を含めた庭園も素晴らしい。

 

 さらに、カフェと言う意外な見どころがある。トリエステには素敵なカフェが多く、カフェ・サン・マルコなど150年以上もの長年にわたり多くの文化人たちに愛されてきた老舗カフェが街中に点在する。また、イタリアのコーヒーメーカーを代表する「illy」の本社があるのも、ここトリエステである。

 

 

       ミラマーレ城      カフェ・サン・マルコ

 

 「コーヒーの街」とも呼ばれるルーツは18世紀に遡る。当時の町はアフリカからヨーロッパに運ばれるコーヒーの経由地点として発展し、19世紀には多くのウィーン風のカフェが造られた。ドイツの詩人リルケなど各国の文豪が集まった国際的な「カフェの街」として発展し、今もその名残で素敵なカフェが多い。

 

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 世界的なスケールで一帯一路を主導する中国に対し、我が日本は環太平洋パートナーシップ(TPP)を主導る。だが、その規模から言えば、当初は参加予定であったアメリカが抜けたため、TPPは一帯一路の足元にも及ばない。一方、順風満帆のように見える一帯一路だが、同時にリスクも抱えているようだ。そのリスクヘッジのため、いずれ狡猾な中国は日本を誘い込むであろう。その時に日本政府はどのように対応するのか注視したい。

 

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