世界の人形館からの夢メッセージ

夢と寛ぎを紡ぐワールドスクエア
<< 東日本大震災の被災地、南三陸町を訪ねイースター島を懐かしむ | main | ニュージーランド銃乱射事件で想起したNZ南島の旅(1) >>
インドとパキスタンが領有権を争うカシミールの桃源紀行
10

 先月(2月)下旬はずっと、ベトナム・ハノイで開催されたアメリカと北朝鮮の首脳会談に関する話題で持ちきりであった。その焦点は北朝鮮の非核化であったが、その陰に隠れるように勃発したのが、核兵器を持つインド・パキスタン両国の軍事衝突。そのきっかけは、インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方で2月中旬に起きたテロ事件だ。インド側のジャム・カシミール州の州都スリナガルの郊外プルマワで、インドの治安部隊40人が殺害されたのだ。

 インド政府はパキスタンから越境してきたイスラム過激派組織、ジャイシェ・ムハマド(JeM)の犯行と主張し、拠点とされるパキスタンの首都イスラマバードから北約100kmのバラコットを空爆した。その後はカシミールの実効支配線になっている停戦ラインを挟んで両国戦機による空中戦となり、インドは相手の1機、パキスタンは同2機撃墜した由。カシミールを巡りこれまで時々地上で砲撃戦があったが、空軍機が打ち合うのは極めて異例である。

 懸念されるのは両国の現政権が国内の支持固めのため、強硬な手段に訴え兼ねないことだ。インドのモディ首相は4〜5月に総選挙を控えてパキスタンに弱腰を見せられず、昨年8月に就任したパキスタンのカーン首相も総選挙で「インドに絶対譲歩しない」と訴えていたからだ。

 

 

 

 長年懸案になっているカシミールの帰属は、1947年に両国がイギリスから独立以来の争いの根源と言えよう。特に、1971年まで3度もインド・パキスタン戦争が起きたが、その当時と現在では情勢が全く違う。つまり、1998年に両国は競うように核実験を繰り返し、インド約130、パキスタン約140の核弾頭を持つ核武装国になっているのだ。このまま両国の武力衝突がエスカレートすれば、アジアは勿論、世界の安全保障にとっても大きな脅威となろう。

 早速インドとパキスタンの夫々の友好国、アメリカと中国が憂慮し、仲裁に乗り出す構えを見せている。しかし、超大国の関与は不必要な内政干渉にもなり、シリアなどの例を見るごとく代理戦争 or 内戦を誘発するリスクをはらんでいる。やはり、国連を中心にして国際社会は一致協力して両国に圧力をかけ、危機を未然に回避するため速やかなアクションが望まれよう。

 

 そんな危険極まりないと見做されるインド側とパキスタン側のカシミールを、私ことワールド・トラベラーは既に何度も訪れているが、特に印象深かった2008年7月に出かけたインドが実効支配するジャム・カシミールの旅の模様を紹介しよう。

 

 ☆━…━☆━…━☆━…━☆━…━☆━…━☆━…━

 

 灼熱の太陽が照りつける平地に位置するインドの首都、ニューデリーからカシミールの最大都市スリナガルに着くと、清涼な空気と桃源郷を思わせるような美しい景観が広がる。しかし、最初に足を踏み入れた空港はまるで空軍基地のように殺風景で、なんとなく物々しい雰囲気だった。タクシーを拾い市内に向かうと、沿道ではおよそ500m毎に銃を持った兵士が立つ。この不気味な光景はスリナガル郊外でも似たり寄ったりで、ずっと東寄りにあるレーでも軍事基地が多いので緊張感が漂う。

 

 先ず、これがインドかと疑いたくなる最北の地、スリナガルは海抜1730mに位置し、まさに桃源郷のような別天地だ。涼風が香る山の空気と鮮やかな緑が長旅の疲れを癒してくれた。ヒマラヤに流れを発して大河インダスに合流するジェラーム川が広い谷を形成し、この盆地状の渓谷の中央に大小3つの湖に囲まれた市街地が広がる。観光のスタートは、町の東にある大きなダル湖がイチ押し。水草が生えて透明度が高い水を湛える湖には無数とも言うべきハウスボートが浮び、周りには緑濃い山々が連なる。名物の手漕ぎの小舟シカラで約3時間の湖上遊覧を楽しんだ。

 

 

     ダル湖とハウスボート   湖上遊覧を楽しむ筆者

 

 ネルー公園になっている小島、スイレンなどが咲く水上庭園、水上マーケットなどを回り、情緒たっぷりのクルーズを満喫した。少しイタリアのヴェニスと雰囲気が似ているダル湖の東岸沿いには、ムガール帝国の皇帝たちが造った庭園がいくつかある。中でもジャハーン・ギール皇帝が王妃のために造ったシャーリマール・バーグが素晴らしく、多くの噴水と背後の山並みが美しい。また、イスラム教徒の街だけにモスクも目立ち、カシミール様式のモスク建築が興味深い。数ある中でも1400年創建のジャマー・モスクは、砂岩造りの荘重なインド・サラセン様式のモスクとして知られる。

 

 

 シャーリマール・バーグ   ジャマー・モスクを背にして 

 

 郊外も見どころが多く、スリナガルの東80kmほどにあるソーナマルグが特におススメだ。標高が2740mもあるので肌寒く、少し走ると息苦しくなる。ポニーに乗って約3kmの先にある氷河近くまで行ったが、緑の草原の背後に聳えるヒマラヤ山脈の雪山が白く輝き感動的であった。

 それはまさに平和そのものの桃源郷を彷彿させる佇まいだが、一方では沿道のあちこちに国境兵士がものものしく警備していた。記念にと一人の兵士と仲良く写真を撮ったものの、やはり積年の紛争の地と気づくと直ぐに我に返った。

 

 

  ソーナマルグで乗馬する    兵士と仲良くなった

                ワールド・トラベラー

 

 イスラム文化が息づくスリナガルから空路で東へ飛び、約45分後に行政的には同じジャム・カシミール州に属するが、チベット的な風土を持つラダック地方の中心都市レーに到着した。飛行中に機内から眺める風景も、緑豊かなスリナガル盆地から厳しく荒涼たるラダック山地に変わる。チベットが源流でインダス河の上流に位置するラダック地方は、「小チベット」とも呼ばれるほどチベット仏教(ラマ教)の世界が広がる。その中心的な役割を担うのがラマ教の僧院ゴンパで、その規模や豪華さは本場チベットの寺院を凌ぐものもあるほどだ。

 レーを拠点にしてインダス河沿いの各地のゴンパを巡ったが、南東郊外43kmにあるヘミス・ゴンパが最も有名だ。17世紀前半に創建されたラダック最大のゴンパで、僧が神々の仮面をつけて豪壮に踊るヘミスの大祭で知られる。レーとヘミス・ゴンパの中間にあるティクセ・ゴンパは15世紀に険しい岩山に砦のように築かれ、ラサのポタラ宮を彷彿させる。ほかに、西郊外約60kmのリキール・ゴンパ、町の北外れの丘にそびえ建つ白亜のシャンティ・シャンカル・ゴンパも見逃せない。なお、レー市内では、町の北背後の岩山に建つ旧レー王宮が必見で、16世紀築の威風堂々の建物だ。

 

 

            ヘミス・ゴンパ                      ティクセ・ゴンパ

 

レ―郊外のマト・ゴンパ付近 シャンティ・シャンカル・ゴンパ

   で少年僧と共に

 

 ☆━…━☆━…━☆━…━☆━…━☆━…━☆━…━

 

 仁義なき戦いのような争いを永年続けるインドとパキスタン両国だが、独立前は英領のインド帝国を形成していた仲間だ。お互いに信奉する宗教(ヒンドゥー教とイスラム教)の違いは深刻だが、いわゆる本来は兄弟国である。だが、肉親間の相克は一旦こじれると、修復が至難であるとされるのは古今東西を問わないようだ。

 

                             ◇◇◇  ご案内  ◇◇◇

 

 カシミール問題を詳述した筆者(ペンネーム:高やすはる)の著書がありますのでご案内します。

272の国と地域を制覇した77歳のワールド・トラベラーはたった1人で紛争地を旅した!

      

      幻冬舎 定価本体1,400円+税 

 

 最寄りの書店でお買い求め可能です。また、アマゾンなどインターネットショッピングもできます。なお、書店やネットショッピングで入手不可能の場合は、在庫十分な世界の人形館でお求めできます。ご連絡下さい。

お問い合わせ:世界の人形館 
                     TEL 04−7184−4745

       携帯 090-8726-5599
        E−MAIL  ko-yasu@maple.ocn.ne.jp

Copyright ©The World Doll Museum WDM. All Rights Reserved 

| 世界の旅−アジア | 00:27 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - | ↑TOP
スポンサーサイト
0
    | - | 00:27 | - | - | - | - | ↑TOP
    コメントする









    この記事のトラックバックURL
    http://abiko8524.jugem.jp/trackback/313
    トラックバック
    PR
    PROFILE
    LINKS
    CALENDAR
    S M T W T F S
      12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
    << October 2019 >>
    SELECTED ENTRIES
    CATEGORIES
    ARCHIVES
    新着コメント
    • 2018 FIFAワールドカップの舞台ロシアの旅−モスクワの今昔
      高 (06/25)
    • 2018 FIFAワールドカップの舞台ロシアの旅−モスクワの今昔
      相子 (06/24)
    • 米朝首脳会談の舞台セントーサ島と我が総理の外交に想う
      高 (06/20)
    • 米朝首脳会談の舞台セントーサ島と我が総理の外交に想う
      相子 (06/19)
    • 史上初の米朝首脳会談が開催されるシンガポールの今昔
      高 (05/19)
    • 史上初の米朝首脳会談が開催されるシンガポールの今昔
      相子 (05/18)
    • 14年ぶり首相に返り咲くマハティール氏とマレーシアの旅(3)
      高 (05/11)
    • 14年ぶり首相に返り咲くマハティール氏とマレーシアの旅(3)
      相子 (05/11)
    • It's Sho-Time ! 二刀流の大谷翔平選手が活躍するロサンゼルスを懐かしむ
      (04/16)
    • 81歳と春の花と国会混迷
      高 (04/16)
    MOBILE
    qrcode