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トランプ大統領が首都と認定したエルサレムの想い出
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 3つの宗教の聖地が集中する都市をご存知であろうか? 火種の絶えない中東で一時は猛威を振るったイスラム国(IS)がやっと崩壊したのも束の間、今度は宗教対立という新たな火種ができた。それは一昨日(12月6日)アメリカのトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定し、大使館を現在のテルアビブから移転することを決めたのである。昨年の大統領選での公約を順守することで、支持基盤の親イスラエル系の保守勢力などをつなぎ留めたい国内向けの政治判断が強いとの由。

 在イスラエル米国大使館の移転はクリントン政権下の1995年に制定の米国内法で義務付けられて入るが、歴代大統領は中東の安全保障への影響に配慮し、半年ごとに移転判断を先延ばしする大統領令に署名してきた。しかし、トランプ大統領の娘婿でユダヤ教徒でもあるクシュナー大統領上級顧問が取り組んでいる中東和平交渉を軌道に乗せるため、同大統領は一度は表明した「移転の先延ばし」を撤回してエルサレムの首都認定という「パンドラの箱」を開けてしまったようだ。 

  トランプ政権は「過去22年間、米国が大使館の移転を自制したにもかかわらず中東和平は進展しなかった」と述べ、今回の措置は中東和平の行方には影響しないと主張する。また、パレスチナ自治政府が将来の首都と位置づける 東エルサレムについては

 「パレスチナの支配地域だ」と述べ、エルサレム全体がイスラエルの首都だとするイスラエル政府の立場を追認したわけではないと釈明する。さらに、最近はアラブ諸国がイスラエルへの接近姿勢を強める中、今回の措置をアラブ諸国が受け入れ、自治政府も結果として追認するとの計算もあったとみられる。


 だが、現実には身内のティラーソン国務長官やマティス国防長官が懸念していた通り、即座に中東各地で反発が噴出し、クシュナー氏が主導する中東和平交渉は頓挫する公算が大との見方が強まっている。また、アメリカの情報機関も今回の措置がパレスチナやイスラム過激派による反イスラエル闘争に火をつける可能性が大きいほか、中東での米国権益がテロ攻撃の標的にされかねないとの情勢分析を強めているとか。国際社会もパレスチナ自治区をはじめとする中東諸国はもちろん欧州もこぞって反対しており、北朝鮮までが批判する始末だ。

 

 ここで中東通でない限り理解しがたいエルサレムにつき纏めてみよう。イスラエルは1948年の第一次中東戦争で西エルサレム、1967年の第三次中東戦争で東エルサレムを占領して市全体を同国の首都として宣言したが、国際的に認められていない。と言うのは、1948年にイスラエルが建国宣言すると、当時住んでいた多数のパレスチナ人が難民になった。彼らはイスラム教徒が多く、東エルサレムを将来の独立国家の首都と主張する。国際社会もアメリカの歴代政権も、「エルサレムの地位はイスラエルとパレスチナの和平交渉で決めるべき」としてきた。このため各国はテルアビブを事実上の首都とみなし大使館を置く。

 因みに、エルサレムの約1km四方の壁に囲まれた旧市街には、古代ユダヤ王国の神殿の一部とされる嘆きの壁、キリストの墓と言われる場所に建てられた聖墳墓教会、イスラム教の預言者ムハンマドが昇天したとされる岩のドームがある。要するに狭い場所にユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地が混在するのだ。もし、アメリカがエルサレムを最終的に首都として認め大使館を移転すると、特に聖地を大切にするイスラム教徒の反発を招き、ひいては中東全体を混沌化し不安定にする懸念が大であるからだ。

 

             −−− 嘆きの壁での2人 −−−

  

     トランプ大統領       ワールド・トラベラー

   (ネットより転用・加工)

 

 斯様に複雑な街エルサレムを私こワールド・トラベラーは1994年12月に訪れており、その時の模様は2017年 1月 24日付け幣ブログ「 トランプ大統領ゆかりのユダヤ教の国、イスラエルの旅 」で述べている。一部重複するかも知れないが、今一度エルサレムはどんな都市か紹介しよう。

 

 神の名の下に4000年の昔から民族の興亡を賭けて数え切れない戦いの舞台となる歴史を刻んで来た街は、標高790mの小高い丘の上に位置し、丘と坂が多く変化に富む。見どころが多い旧市街の東にある、ケデロンの谷上にあるのがオリーブ山である。標高825mの丘はユダヤ教徒にとっては聖地巡礼の最終ゴールであり、ここからエルサレムの街並みがばっちり見下ろせる。なだらかないくつもの丘にまたがり、その斜面に薄いベージュのエルサレム石で統一された建物がびっしり建つ。

 訪れたのは朝日が出て間もなくで、街全体が神秘的に輝くような中で、ひときわ目立つのが黄金色が眩い岩のドーム。預言者ムハンマドが天馬に乗り昇天したと伝えられる聖なる岩の上に建ち、預言者の足跡も残る。このドームはユダヤ教も、ダビデ王と神との契約が収められた箱を祀った場所として譲らない。後ほど岩のドームに行き見学し、黄金色のドームを支える八面体の建物のブルータイルの美しさに見惚れたが、ドーム全体の写真を撮るならオリーブ山の方が一押しだ

 

  

  オリーブ山より旧市街を望む筆者 嘆きの壁(手前)と岩のドーム(後方)

 

 岩のドームが建つ神殿の丘は古くはソロモンの神殿があった場所とされ、ユダヤ・イスラム・キリストの3宗教の聖地になっている。岩のドームと共にイスラム教徒にとって重要なのが、銀色のドームを持つアル・アクサー寺院だ。ムハンマドが神と共に夜空を旅した地とされる。この丘を囲む西側の外壁が、ユダヤ民族の永遠の故郷と有名な嘆きの壁である。壁の前で正装姿で聖書を読む人や、壁に顔を押し付けるように祈る人など熱心な信者が絶えない。この壁がある広場で壁の上を見ると、岩のドームが黄金色に輝いていた。

  この嘆きの壁から西北へ600mほど、キリストが十字架の刑場へ最期の道を歩んだヴィア・ドロローサ(苦難の道)進むと、キリスト教徒にとり重要な聖墳墓教会がある。新約聖書には、弟子のユダに裏切られたイエス・キリストが十字架に磔にされたと書かれている場所だ。現在この教会はカトリック教会、アルメニ使徒教会、東方正教会、シリア正教会、コプト正教会の教派により共同管理されており、一日中それぞれ何らかの教派によるなどの祈祷が行われている。

  

神殿の丘、中央に岩のドーム ヴィア・ドロローサ   聖墳墓教会 

 手前がアル・アクサー寺院

 

 我々日本人は一般的に宗教に無関心だが、外国、特にイスラム教やユダヤ教などを信仰する教徒にとっては、宗教は日常生活のベースになっている。それだけに宗教対立は国家間の争いにまでなることが往々にしてあり、その点では我が日本は天下泰平の平和な国と言えよう。

 

(後記)

●トランプ米大統領はエルサレムのイスラエル首都認定撤回を求める国連の緊急特別総会の決議案に賛成票を投じた国に対し、金融支援を打ち切る構えを示した。この暴力団紛いの恫喝に対し、ヨーロッパなど世界各国の首脳が素早く反発した。同大統領が有言実行なのは結構だが、どうも品性が無い御仁のようだ(12月22日)。

●国連の緊急特別総会で、アメリアに方針の撤回を求める決議案を128ヵ国の賛成多数で採択した。しかし、反対9、棄権35、欠席21の合計65ヵ国もあり、賛成国への財政援助援助停止の警告をちらつかせた影響があった様だ。因みに、反対した9か国はグアテマラ、ホンジュラス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ミクロネシア、イスラエル、トーゴの弱小国である。 

●アメリカはイスラエルの建国70年に合わせて在イスラエル大使館を商都テルアビブからエルサレムに移転した。しかし、東エルサレムを将来の独立国家の首都と想定するパレスチナは直ぐに猛反発し、パレスチナ自治区ガザでは4万人が抗議デモに参加した。イスラエル軍との衝突で、少なくともパレスチナ人43人が死亡し、2000人が負傷した。1日の犠牲者としては、イスラエル軍がイスラム組織ハマスに大規模攻撃した2014年以降で最悪規模となった(2018年5月14日)。

 

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    高さん こんにちは!
    私はユダヤや十字軍のこと等知りたくて、それらを研究しているクリスチャンの先生の講座に通いましたが、とても複雑難しく、全く理解できずにおります。
    こうして色々と書いて頂くと参考になります。
    写真を大きくして拝見しますと、テレビで見るよりとても良く見られますね。
    | 相子 | 2017/12/12 4:58 PM |
    相子さん
    おっしゃる通りです。
    小生も含め誰にとっても複雑で難解なのが、中東です。
    現地で住み、働き、旅して半世紀近く、
    それでも分からないことが多いのが中東です。
    でも、エキゾチックな魅力があるのも中東です。
    小生の場合、その呪縛から逃れることは生涯無いでしょう。
    | 高 | 2017/12/13 8:04 PM |
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