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クルド独立の住民投票が強行されたイラク・クルド自治区の旅
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 イラク中央政府は勿論、トルコ、イラン、アメリカなど国際社会が猛反対する中、少数民族のクルド人を主体とするイラク北部の自治政府「クルディスタン地域政府(KRG)」が、去る9月25日に独立の賛否を問う住民投票を強行した。クルド人住民の多くは賛成票を投じ、独立に賛成が92.73%に達した。早速KRGのバルザニ大統領は政府に独立に向け協議に応じるよう求めたが、政府は住民投票は無効として応じない。住民投票結果に法的拘束力が無いとは言え、KRG、つまりクルド自治区とイラク政府の対立は激しくなる一方だ。

 対抗措置としてイラク政府はクルド自治区内にある2空港(アルビルとスレイマニア)を管理する権限を政府に移譲しなければ、両空港での国際便の発着を禁止するとし各国の航空会社に通知したが、KRGは移譲を拒絶した。今後陸路も封鎖されれば、同自治区の孤立が深刻化しそうだ。また、イラクの国民議会はKRGが実効支配する油田地帯の北部キルクーク州など係争地への軍派遣と、自治区内の在外公館の閉鎖を求める決議した。四面楚歌に追い込まれた感じの自治区だが、中東諸国と対立するイスラエルが支持する唯一の国とは皮肉である。

 

 因みに、クルド人だが、「国を持たない最大の民族」と呼ばれる。総人口は約3000万人で、独自の言葉と文化を持つ。第一次世界大戦後にオスマン帝国の領土の一部は、イギリス・フランス・ロシア間の交渉で一方的に国境線が引かれた。クルド人が住む地域はトルコ南東部、イラン北西部、イラク北部、シリア北東部に分断された。その後は各国で少数民族として迫害され、同化を強要された。苦難の歴史であったが故に、各国で自治要求や独立運動を展開する。しかし、自国内にクルド人を抱える関係国は警戒を強める。

 

  

住民投票終了後にKRG旗  イラク・クルド自治区とクルド人の分布図

 を振り喜ぶクルド人

(ネットより転用・加工)

 

 特に国内のクルド人独立機運が強い隣国のトルコとの緊張が高まっている。実はトルコには人口の約2割、約1500万人がクルド人とされ、独立を目指すクルド人の非合法組織「クルディスタン労働者党(PKK)」が武装闘争を続ける。今も内戦が続くシリアの北部でも、クルド人の台頭が著しい。同国のクルド人組織・民主統一党(PYD)は過激派組織イスラム国(IS)の拠点を攻め、支配地域を拡大中だ。詳しいことは幣著書『ワールド・トラベラーだけが知る素顔のイスラム』をご購読願いたい。

 

 筆者はそんな注目を集めるイラクのクルド自治区を2013年7月に訪れ、旅の概要は2013年7月31日付け幣ブログ『ギネス更新(!?)265ヵ国・地域を旅し, Travel is Trouble 痛感』で触れている。面積は日本の1/5強の8万k、人口は約550万人。1970年イラク北部で設置された自治区で石油を産出し、サダム・フセイン大統領政権崩壊後は経済発展が著しい。東京にある日本クルド友好協会の紹介状のお陰で特別入国できたが、滞在中の外出や移動は自治区内に限定され、治安問題もありバグダッドやモスール行きなどは諦めざるを得なかった。

 

アルビル空港で出国の際に三脚を武器と見做され没収されるトラブルはあったものの、自治区内の治安は概ね良かった。特にクルド人は老若男女を問わず友好的で人懐っこく、こちらが日本人だと分かると一層親日的になる。撮影中の筆者を見ると近づき、必ずと言って良いほど一緒に写真を撮って欲しいとせがまれるほど。また、

クルド人家族と仲良く)

アルビルのホテルオーナー、ザイトナ氏が親身になって相談に乗っていただき、意外に快適な滞在を楽しめたのも忘れがたい。滞在中に訪れた3主要都市を紹介しよう。

 

 先ず自治区の主都になっているアルビルは、バグダードの北およそ350kmに位置する。人口は約150万人の大都市だが、紀元1世紀アッシリア人のアディアバネ王国の都であった古い歴史を持つ。自治政府が独自に進める油田開発から得る豊富な資金をベースに好調な経済成長が続いており、「第2のドバイ」とも呼ばれるほど活況を呈する。街の至る所で建設ラッシュが見られ、特に市街地周辺の幹線道路沿いは高層ビルなどの建設が目立つ。

 旧市街地の中心には、シタデルと呼ばれる巨大な古い城塞がそびえる。約1400年前に建造され人々が住むようになったが、2013年から保存修復工事が進められていた。シタデルの南側は大きな中央広場があり家族連れで賑わい、広場を囲むようにして大きなバザールが広がる。市内にモスクが数多くあるが、最も目立つのは壮麗なジャーメ・ジャリール・ハイヤット・モスクだ。他に街の西外れにあるサーミ・アブドラ・ラフマン・パークという街最大の公園と、東外れにあるファミリー・モールという巨大なショッピングセンターも見逃せない。

 

                              −− アルビルを散策観光する筆者 −−

  

アルビルの象徴・世界最大級 ジャーメ・ジャリール ファミリモールで

  のシタデル(城塞)   ・ハイヤット・モスク  クルドの若者たちと
   

 アルビルの南東200kmほどにあるスレイマニアは、人口が約100万人の自治区第2の都市だ。タクシーを拾って出かけたが、途中でイラク最大の人造湖であるドゥカーン湖を見かけ、遠くに霞むようにザグロス山脈が連なり、その向こうはイランである。峠を下りる前に小高い丘があり、眼下を見るとドゥカーン湖を水源とするレッサー・ザーブ川が流れ、濃紺の川と周囲の赤茶けた不毛の山地とのコントラストが目にも鮮やかで、この川の両岸にドゥカーという町の家々が見える。

 さてスレイマニアだが、特に見どころも無さそうな特色のない街で期待外れであった。敢えて言えば、街の中心にあり、買物客で賑わいを見せるバザールと、その心臓部に建つモスクぐらいであった。当初は1泊する予定であったが、適当なホテルが無いため、急遽アルビルへ戻る日帰りツアーとなった。

 

  

    スレイマニアの新市街の    レッサー・ザーブ川が流れる

    中心を散策する筆者       ドゥカーンの町並み

 

 一方、アルビルの北西153km、トルコ国境まで60kmと近いドホークは、自治区第3の町で人口は約50万人。アルビルを車で出て1時間ほど走ると、チグリス川の支流であるアッパー・ザーブ川が見えてきた。橋を渡って西進すればモスルに出るが、過激派組織・イスラム国(IS)の支配下に入る直前で危険なため右折して北上した。その後高度がどんどん上がり峠を登りつめ盆地に入ると、急に視界が開けてドホークの市街地が広がっていた。

 北側と南側に山々が見えるが、特に北斜面は標高が約2000mの山並みが町に迫り、山の斜面にへばり付くようにして建つ建物も多い。町から南西へ25kmほどにはチグリス川が流れる。東西に細長い町の東部は新市街で、その一角にあるグランド・モスクはかなり立派で、中に入ると直ぐに冷たいお水飲ませてくれホッとした。町の西側は旧市街になっているが、中東独特の大きなバザールが無いようであった。

 

  

     ドホークの市街地を俯瞰     チグリス川の支流を散策

 

 イラクのクルド自治区の独立を問う住民投票は、本日(10月1日)に行われるスペインのカタルーニャ自治州の住民投票にも多大の影響を与えそうだ。カタルーニャ自治州の方は投票結果が拘束力を持つだけに、スペイン中央政府は投票阻止に躍起のようだ。イラク以上の混乱が起こりそうである。

 

(後記)

 クルド独立の夢ははかなく消えたようである。クルディスタン地域政府(KRG)自治区の独立の賛否を問う住民投票から3週間の10月中旬、イラク軍侵攻により油田地帯キルクーク州の実効支配地域を失った。原因はKRGの軍事組織ペシュメルガの一部部隊の裏切りだ。KRGはタラバニ元大統領が創設した「クルディスタン愛国同盟」とバルザニ全KRG大統領派の「クルディスタン民主党」から成るが、KRG独立を望まないイランがイラク政府と組んでタラバニ派に働きかけ、内部から崩した模様だ。

 

                ◇◇◇  ご案内  ◇◇◇

 

私ことワールドトラベラーにはクルド人に関する次の著書があるので、ご関心ある方は是非ご愛読頂きたい。

世界を動かす少数民族』幻冬舎 1,350円+税

 

   

 

 なお、幣著書のお買い求めは、アマゾンなどインターネットショッピンや、最寄りの書店で可能です。なお、書店やネットショッピングで入手不可能の場合は、在庫が十分な世界の人形館でお求めできます。

お問い合わせ:
世界の人形館 
TEL 04−7184−4745
        E−MAIL 
 ko-yasu@maple.ocn.ne.jp

 

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