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北方領土は返還されない!実効支配とスヴァールバル諸島の旅
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 手ぶらでやって来た相手に見事に食い逃げされた!と言うのが率直な印象である。 夕食会では、名物のトラフグ、クルマエビ、和牛、長州地鶏など山口特産の食材をたっぷり使った日本料理や地元の銘酒「東洋美人」が振る舞われた由。さぞ美味かったであろう!客人は冷徹な独裁者と恐れられる柔道愛好者で、引き分けという柔道スタイルではなく「肩すかし」の相撲技で長州人を負かし、さっさと帰国した。日本の伝統国技まで演じるとは恐れ入るほかない。

 2012年12月に民主党(現民進党)に替わり安倍政権が発足以来、掛け声だけは威勢良いが成果はいっこうに上がらない。例えば、アベノミクス、デフレ脱却、一億総活躍プラン、TPP、そして今回の北方領土など。治安が悪く銃社会が蔓延るなど問題の多い外国なら、失政が続けば領袖は身の危険に晒され政権運営も困難になろう。しかし、平和ボケしている日本では今の所そのような動きも無さそうで、どこまでもツキのある御仁である。ツキも実力の一つのようだ。

 

 さて、件の客人とはロシアのウラジーミル・プーチン大統領、ツキのある長州人とは我が安倍晋三首相である。両首脳は一昨日(12月15日)から2日間、山口県長門市と東京で会談を行った。だが、元島民を含め国民誰もが期待した、平和条約締結の前提条件となる要の北方領土(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)の返還交渉は全く進展が無かった。日本外交の完敗である。

 元島民もガッカリしたようで、筆者も同様である。また、北方四島で特別な制度(?)で共同経済活動を行うとか、8項目の経済協力プランの推進はロシアに有利なものばかりで、しかも実現性の見通しが不透明なものが多い。また、残念ながら今回の首脳会談で、実効支配により北方領土は戻らないことが決定的になったようだ。そのことを国民に伝え理解を求める勇気が望まれる。         

 

     

    色丹島の港        プーチン大統領と安倍首相    択捉島の美しい自然

            山口県長門市の大谷山荘で

            (ネットより転用・加工済み)

       

 

 北方領土のうち歯舞、色丹2島の平和条約締結後の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言につき、「主権を返すとは書いていない」というのがプーチン大統領の理解である。現に同大統領は常々、「4島は勿論、1島すらも返還しない。領土問題を云々するのは、日本の勝手だ」と明言している。加えて、同大統領は日米安保条約に基づく日米同盟に対して不信感を持ち、返還後に米軍基地が置かれることを懸念する。これらの経緯は我が首相も百も承知の筈であり、それだけに無策とも言うべき外交は2〜3流と揶揄されるのもうなづける。

 

 今から約48年前の商社マン時代の1969年、気温が零下30度になる厳寒の1月〜2月に、筆者は旧ソ連(現ロシア)の首都モスクワに業務出張したことがある。目的はトリコットというナイロン編地の売り込みで、商談のお相手は政府公団のお役人。それまでユダヤ系アメリカ人、香港人、インド人などとの商売経験があり、丁々発止の商談には慣れていた。しかし、ロシア人との取引は初めてで、この時に全く勝手が違うロシア商法を思い知らされた。

 こちらがオッファー(売り申し込み)しても、きちんと期限内に返事をして来ない。諦めて日本へ帰った後、やっと返事が来て何とか商談がまとまった。この取引を通じて見かけは鈍重そうだが粘り強く、プライドも高い大国意識を持ち合わせていることを知らされた。半世紀近く経った今も、彼らの気質は不変であろう。外交も一種のビジネスではないかと思料する。安倍首相は外務省辺りから関連情報を入手している筈だが、筆者の知見も参考に願えれば幸甚である。

 

 ところで実効支配に関し、筆者は2012年4月24日の幣ブログで「尖閣諸島と世界の実効支配例」を詳述している。今回の日ロ首脳会談で日本側が見落としている、或いは軽視していると思われる重要なポイントがある。それは実効支配の厳しい現実の認識である。本件に就いては、272の国・地域を旅した私ことワールド・トラベラーは数多くの実効支配地を訪れている。

 例えば、アブハジア、沿ドニエストル、ナゴルノ・カラバフ、北キプロス、西サハラ、カシミール、エルサレム、フォークランド諸島などである。特にロシアは北方領土のほかにいくつかの実効支配国・地域を抱えて傑出しており、それなりの実績やノウハウを持っている自負があるのであろう。

 

                                −−− ロシアが実効支配する国(?)−−−

  

モスクワ:旧レーニン丘  沿ドニエストル:   アブハジア:壮麗なロシア

 (ヴァラビョーヴィ丘)   ドニエストル川   正教寺院 2013年旅行

  1969年出張   

  

  一方、実効支配に就いては、我が国はロシアの足元に及ぶまい。例えば、尖閣諸島は日本固有の領土と金太郎飴のように繰り返されるが、相手にされない中国にして見れば、同諸島は我が国に実効支配されていると言うのが同国の主張だ。北方領土のロシアvs日本は、尖閣諸島の日本vs中国と構図が似ているとも言える。ロシアが北方領土で日本に譲らないのは、尖閣諸島の絡みもあるのではなかろうか。

 

 ところで、先述の北方四島で特別な制度下の共同経済活動の件だが、ヒントになりそうものがあるので披露しよう。筆者は2003年8月に極北のスヴァールバル諸島を旅し、北緯78度に位置する諸島最大の町ロングイェールビーンをベース


に、主島のスピッツベルゲン島内を回った。同諸島は1920年ノルウェー領になって同国が主権を持つことになったが、スヴァールバル条約により資源利用は他国にも開放された。

 この権利を使い石炭採掘が盛んなスピッツベルゲン島の炭田には、ノルウェーのほかにロシアの炭鉱もある。そこでロングイェールビーンから遊覧船に乗り、雄大な氷河やフィヨルドなど眺めながら西進した。着いたところがロシア人労働者が住む炭鉱町バレンツブルグであった。スヴァールバル諸島第2の町にはロシア人やウクライナ人が1000人近く住んでおり、産出した石炭はロシアのムルマンスクへ積み出している。町にはほとんど全ての施設が整い、特に立派な博物館は炭鉱関係の展示が目に付いた。

 

               −−− スヴァールバル諸島−−−

  

 風光明媚な町を俯瞰     散策する筆者    バレンツブルグの中心

     (ロングイェールビーン)

 

 このバレンツブルグでは、主権を持つノルウェーの領土内でありながらロシア人などが働き生活し町をつくる、いわゆる共同経済活動をしているのだ。できれば安倍首相もこの例を北方四島で参考にして頂きたいが、一つしか無い主権はロシアが絶対に譲らないこと覚悟せねばならない。

 

 戦後71年経った現在も、日本とロシア間で平和条約が未締結は異常である。何とかそれを打破しようと、新しいアプローチを試みようとする安部首相のチャレンジスピリットはある程度評価できる。だが、高齢化する元島民のことを考えると、思い切った決断力が望まれよう。これは北朝鮮の長引く拉致問題と共通するものがあり、一刻の猶予も許されまい。

 

 (後記)プーチン大統領が帰国後、安倍首相が度々民放テレビに出演して懸命に釈明していた。しかし、終始歯切れが悪く、今回の首脳会談は不完全燃焼で空振りに終わったこと、賢明なご自身もお分かりであろう(12月19日)。

 

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