世界の人形館からの夢メッセージ

夢と寛ぎを紡ぐワールドスクエア
日本外交の実力が問われる、ユダヤ商人とのハード交渉で垣間見る同床異夢の日米TPP問題
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 一昨日国賓として来日したバラク・オバマ米国大統領は、本日(4月25日)次の訪問国・韓国に向かった。慌ただしい2泊3日の旅程であったが、訪日の具体的な成果は如何なものであったか? 到着の23日夜、厳戒体制が敷かれた東京・銀座の超高級寿司店で、同大統領と安倍晋三首相が会食した。細身のスマートな大統領にとり、14貫ものペロリと平らげた模様の寿司が案外最も印象的であったかも知れない。
 一方、ホスト側の安倍首相は首脳会談後に行われた共同記者会見で度々同大統領を「バラク」と呼び、個人的にも直接のパイプができたとばかりに親密ぶりを強調していた。現役の商社マン時代に10年近く海外駐在し、今や271ヵ国・地域を旅した私こと
ワールド・トラベラーにとり「First Name呼び」に違和感は無く今更との感じだが、外国へ出たがらない内地指向の人たちには気障に聞こえたかも知れない。いずれにせよ、首相の我田引水的なはしゃぎぶりが際立っていた。

 筆者は今回の首脳会談のキーポイントは2つと考える。一つはTPP問題であり、もう一つは尖閣問題である。後者の尖閣については、日米の安保条約が適用される範囲とアメリカに明言させたのは大きな収穫である。しかし、前者のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は日米関係閣僚などの長時間の交渉にも拘わらず、大筋すら合意に至らなかった。また、オバマ大統領が韓国へ発つ直前に発表された日米共同声明でも、「前進する道筋を特定」「TPP合意に向け大胆な措置を講じる決意」とのことだが 、さほど頭の良くない筆者にはサッパリ訳が分からない。まさに意味不明の玉虫色表現と言わざるを得ない。
 また、大統領も首相も共に「同盟国」を強調するが、ことがTPPになると話が全く別になる。昔も今も自由貿易を建前とする米国に対し、我が日本は農産品輸入に対し高関税を堅持する。他の分野でも厳しい規制があるなど保護貿易の色合いが依然として濃く、敗戦後の著しい復興を支えた貿易立国の名が泣きそうだ。大平洋戦争後は基本的には仲良しの同盟国になったとは言え、生まれも育ちも違うのでお互いの本音は正反対である。TPP交渉に関しては、両者の関係はまさに同床異夢と言うべきが適切であろう。

 因みに、TPPの損得や問題点など要約すれば、以下の通りである。



           ―  日米TPP交渉の実情(推測)  ― ―   
     
                    (インターネットより転用・加工済み)


TPPのメリット

  • 関税撤廃により貿易自由化が進み、日本製品の輸出増大。
  • 貿易障壁撤廃などにより、大手製造業企業の貿易効率化し利益増大。
  • グローバル化の加速でGDPが大幅に増加し、少子高齢化にも対応可能。

TPPのデメリット  
 

  • 関税撤廃で米国などから安い農産品が流入し、零細な日本農業に大ダメージを与える。
  • 海外の安価な商品が流入によりデフレに逆戻り可能性がある。
  • 遺伝子組み換え食品や食品添加物など規制緩和で、食の安全が危うくなる。
  • 医療保険自由化・混合診療解禁により、国民保険制度圧迫や医療格差拡大の懸念。

また、下記の件が将来問題になる恐れもあり、要注意である。

ISDS条項

海外起業を保護するため内国民待遇が適用される。もし企業と投資家が損失や不利益を被った場合、国内法を無視して世界銀行関係の国際投資紛争解決センターに提訴可能。結果として日本政府や自治体は法外な賠償金を請求されるか、不都合な法律改正を迫られる恐れがある。

ラチェット規定

ラチェットは一方にしか動かない爪 歯車を意味する。これが転じたこの規定はいったん自由化や規制緩和されると、当該国の不利益や不都合に拘わらず取消しが不可能である。
 

 一方、麻生太郎財務相が閣議後会見で、大筋合意が見送られたことにつき、「11月の米中間選挙前に答えは出そうもないため、協議は継続せざるを得ないだろう。また、オバマ大統領に国内をまとめ切る力はない。仮に閣僚レベルでまとまっても、議会を通る保証はない」とアメリカ固有の国内事情を指摘した。不用意な失言癖があると言われる同相にしては珍しくピタリ的を得た発言で、筆者も全く同感である。
 2009年1月に第44代アメリカ合衆国大統領に就任後のオバマ氏の業績などをチェックすると、年に似ず巧みな弁舌を武器に就任後すぐにノーベル平和賞を受賞している。だが、政治家として必要な決断力や実行力に関しては、物足りないとの声が多いようである。初のアフリカ系米国大統領として、標的になりやすいとされる事件(例えば前例がある暗殺)に巻き込まれるのを避けるためであろうか、結局は穏当で無難な発言が多い。ハワイで生まれ、ワールド・トラベラーも駐在したインドネシアで育った生い立ちから判断するに、世渡りの上手な現実主義者と推察する。

 ところで、TPP交渉でいつも気懸りなある人物がいる。それはTPP交渉の米側代表であるマイク・フロマン米国通商代表である。一見柔和そうな顔つきだが、時折厳しい表情を見せる。ファーストネームがミハエルとも言うのでひょっとしたらと思い、インターネットで調べると案の定ユダヤ系であった。古今ユダヤ系の有名人は数多いるが、シェイクスピアの「ハムレット」に登場するシャイロックもユダヤ人の金貸しであった。一般にタフな交渉人が多いだけに、今後とも続きそうな難交渉が思いやられる。
 今から半世紀以上も前に商社マン(三井物産)になり、米国のビジネスマンたちと繊維の商談をした。彼らは全員と言ってよいほどユダヤ系で、長時間に及ぶ厳しい交渉を強いられた。当時は中国系の華僑たちともよく商談したが、面子を重視する彼らは筆者の熱意にほだされて最後は妥協してくれ必ず商談成立した。インド系の印僑もしぶといが、柔軟性がある。しかし、ユダヤ系は面子よりソロバン重視で、時には非情で妥協は好まない。当方の歩み寄りにも拘わらず、商談不成立が度々あった手強い交渉人であり仕事師であった。

 安倍首相をはじめ、政府や官僚の関係者たちの中に、果たしてユダヤ商人の手練手管や凄さなど知る御仁がどれだけいるのであろうか?多分ユダヤ系とのビジネス経験者は皆無に近く、結論を言えばTPP交渉の妥結は極めて懐疑的にならざるを得ない。
 また、なんとフロマン氏はオバマ大統領のハーバード大学法科大学院の同級生であり、換言すれば大統領の分身になる。このことを踏まえ、TPP担当大臣の甘利明経済再生相は商売上手なユダヤ商人相手の早期交渉妥結のためには、相当な覚悟とタフな交渉力が望まれる。いずれにしても、誠実な人柄(と見受ける)の同大臣にはご苦労様と申し上げたい。

 最後に、この半世紀近く世界を股にかけて旅してきたワールド・トラベラーから見れば、日本側のTPP問題に対する考え方は甘ちゃんで平和ボケしていると断定せざるを得ない。元々関税撤廃のためのTPPであり、関税撤廃に一切応じない例外的な聖域に固執するのはTPPの主旨に反すると言えよう。
 どうも我が国はボタンの掛け違いに未だに気付かないようだ。世界同時的に着々と進展するグローバル時代に対応できず、それに逆行するような時代錯誤的なガラパゴス化が心配でならない。筆者は基本的にはTPP賛成派だ。TPPのメリットからデメリットを差し引いてもお釣があるからである。

 もしコメや肉などの関税撤廃または大幅削減したらどうなるのか憂慮する向きが多いが、我が政府が最終的に補填し救済すべきであろう。このために4月1日からスタートした消費税の増税分を回すのも一案ではないか。農家・生産者側もいつまでも救済の温情に甘えるのではなく、国際競争力のある農業や畜産を目指す経営努力が欠かせない。
 過日(3月20日〜4月18日)インド洋と太平洋に浮かぶ島巡りをして来た。いずれも平和な島々だが、環境保護を重視し過ぎるあまり外国の投資を歓迎しない島がある。このような島では仕事探しに苦労するので、島を去る人たち(特に若者)が多く人口減少が続くので活気が無い。我が日本も国際社会からの孤立化を回避するためにも、TPP問題で思い切った決断力と先見性が焦眉の急と思料する。

    ― ― ワールド・トラベラーが南太平洋の島々を巡る 
 ― ―

          
             ウォリス:マタラア展望台より美しいラグーンを望む     


      
    ウォリス:壮麗なマタ・ウツ大聖堂    ニウエ:透明度抜群のリムプール
                       でシュノーケリングを楽しむ


 この世の中の交渉事には建前と本音があるケースが多く、それだけにその使い分けが鍵になる。特に本音を相手に披露する絶妙のタイミングが求められ、TPP交渉でも両刀使いができる本格的な政治家の登場を切望したい。もし、これが困難で民間などで適材がいれば、年齢不問で積極的に登用すべきと提言したいが如何であろうか。

(後記)
日本、アメリカ、オーストラリア、ベトナムなど太平洋を取り囲む12ヵ国が参加した環太平洋経済連携協定(TPP)が、9月5日に大筋合意した。一部の国が強硬であったため、交渉は難航を重ねた末の合意であった。TPPは各国がお互いに門戸を開き、貿易や投資などを盛んにして経済を活性化させるもので、TPPの発効で世界の4割を占める巨大市場が誕生する。ちなみに、TPPの協定文書は全30章で構成され、関税の撤廃・引き下げを決める物品の市場アクセスだけでなく、金融サービス、投資、知的財産、環境、労働など分野は幅広い。中国が台頭する中で、21世紀型の経済ルールを主導していく狙いがある(2015年9月6日)。

自民党、公明党、維新の会などの賛成多数でTPPが国会承認されたが、トランプ次期米国大統領の離脱表明で発効は絶望的の様である(2016年12月9日)。

         ◇◇◇  ご案内  ◇◇◇

 

 

 ワールド・トラベラーが館長を務める世界の人形館では、271カ国・地域
  民俗人形、紙幣とコイン、仮面、壷、置物、絵画、木彫り、地球儀、時計、
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  ご遠慮なく、お気軽にご来館下さい。慈善活動につき、入館料は無料です。
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   −−− 国境の無い平和な「世界の人形館」の館内風景 −−−

 

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書名は
私はワールド・トラベラー世界257ヵ国・地域を旅した男
定価は本体1、500円+税。お買い求めはインターネット(アマゾンや楽天ブックスなど)、または最寄の書店でどうぞ。
  なお、本書は単なるトラベル・ガイドブックではありません。日本の将来を憂い、 特に三流とも揶揄される日本外交に対し、ズバリ直球でもの申す本物志向の提言書でもあります。是非ともご愛読のほどお願いします。


 
     表紙カバー                      口絵
   
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