世界の人形館からの夢メッセージ

夢と寛ぎを紡ぐワールドスクエア
冬季五輪開催地ソチへの旅 ー 世界最北(?)の亜熱帯に驚く
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  愈々第22回オリンピック冬季競技大会が、ロシア南部のソチで2月7日から始まる。冬季オリンピックでは史上初めて7日の開会式に先立って一部の競技が前日に行われ、冬季オリンピック史上最多の87の国と地域が参加との由。

 平和のスポーツ祭典を控え、現地ではどこもかしこも厳戒態勢が敷かれている。無人飛行機やヘリコプターが飛び、特殊部隊が黒海の海中に潜むと聞く。これはソチが紛争の多いチェチェンなどのカフカス(コーカサス地方)に隣接し、また近くのボルゴグラードで昨年10月から爆破テロが続いているからである。実行犯はカスピ海に面したダゲスタンが多いとか。


 また、各国首脳の開会式出席の可否も注目される。米国のオバマ大統領、英仏独などの首脳陣なども出席しないが、背景にあるのは同性愛プロパガンダ(宣伝)禁止法である。昨年6月にロシア議会が同禁止法を可決、プーチン大統領が署名後に成立したことへの反発と見做されている。

 一方、我が安倍晋三首相は開会式当日が北方領土の日にも拘らず、プーチン大統領の招待を受けて敢えて開会式に出るのはロシアとの関係を重視しているのであろう。勿論、中国の最高指導者である習近平国家主席が2月6日からロシアを訪問し、7日の開会式出席への対抗心があるのは明白だ。

 世界を股にかけて旅する私ことワールド・トラベラーは、その看板を汚すまいと昨年(2013年)6月にソチを訪れ、オリンピック前の現地を種々視察した。この旅ではロシア南部のほかに、モルドバ、沿ドニエストル、アブハジア、チェチェン、北オセチア、ダゲスタン、アルメニア、ナゴルノ・カラバフ、グルジア、アジャリア、イラク・クルド自治区、アブダビ(UAE)を巡り、訪問国・地域は265を達成した。全般的に紛争地帯を抱える超危険な旅であった。実際に北オセチアのあの悲劇があったベスランでは、散策中に不審者とかで警察に2時間も拘束された。 

 ロシアではソチに加え、黒海に繋がるアゾフ海のタガンログ湾郊外に位置するロストフ州の州都ロストフ・ナ・ドヌ、クバーニ地方の中心都市で古都の香りがするクラスノダールを鉄道で訪れるなど、1ヵ月の長旅になった。
 

    −−− ロシア南部を訪れたワールド・トラベラー −−−

  

  ロストフ・ナ・ドヌ:ブラゴヴェ    クラスノダール:駅プラット
   シェンスキー寺院を訪れる      ホームに降りた筆者の旅姿

 ソチ Сочи(Sochi)はモスクワの南およそ1600km、かつてスターリンの別荘もあったクラスノダール地方のリゾート保養都市。プーチン大統領も別荘を持っており、首脳会談が度々開かれる。人口は約40万人で、温暖な黒海に面し、背後は2000〜3000m級の西カフカス山脈がそびえる。

 とても寒い冬のオリンピックが行われるとは想像し難く、気候はむしろ亜熱帯だ。緯度はなんと札幌と同じ北緯約43度だが、2月の平均気温は6度で平地では雪はほとんど降らない。6月から黒海のビーチで水泳が楽しめ、実際に筆者は滞在中の6月19日に泳いだ。しかし、ビーチは砂浜ならぬ小石だらけで、裸足で歩くのが痛くてたまらなかった。意外に良かったのが、新鮮な黒海のシーフード料理が美味しいことだ。また中華の小籠包に似たヒンカリは代表的なソチ料理で、熱い肉汁が口の中に広がり最高。


 冬季オリンピックの開催地になる前のソチを知る人は、我が国では恐らく少ないであろう。ソチ在住の日本人もいないらしい。無理もないことで、黒海沿いのリゾートスポットとしてはヤルタ会談で有名なクリミヤ半島の海岸のほうがずっと有名であった。

 しかし、ソ連崩壊後のクリミヤはウクライナ領になり、代わりにロシアではソチが有数のリゾート都市として隆盛し始め、特にプーチン政権になってから更に大規模な投資が行われた。因みに、筆者は2001年7月にウクライナを訪れた際、美しい景勝地のクリミヤ半島一帯を周遊済みである。

 さて、クラスノダールから鉄道でソチ駅に降り街中に入ると、オリンピック関連の工事だらけで移動も困難であった。ホテルも続々と建設中で、街全体が建設ラッシュに沸いていた。特に感じたのがプーチン大統領の意気込みである。今回のオリンピックのために投入される総資金は、最終的に500億ドル、或は1兆5000億ルーブル(約4兆7000億円)になる見込み。これは冬季五輪としては過去最大であり、また競技数など規模がずっと大きい夏季五輪と比較しても桁違いに多い。また、関係者の話によれば、この巨額の3分の1が横領などの汚職に消えているとの告発がある。また、ロシアの野党指導者は同大統領こそが汚職競技の金メダリストと批判しているとか。

 これほどまでに大統領が力を入れるのは、オリンピックのような大規模な国際イベントを招致しつつ、これをテコに国内的な結束を高めたいのであろう。また、日本をはじめ西側諸国がソ連のアフガニスタン侵攻を理由にボイコットしたため、不完全であったと言われる1980年のモスクワ・オリンピックを仕切り直すという思いもあるようだ。

 ここでソチを散策・観光して感じたことをお話したい。意外に坂と丘が多い街で、道路は曲がりくねり狭い。「ロシアのリビエラ」と呼ばれるほどソチのビーチは割合広いが、小石が多くて足元が悪い。波もあるので、遊泳には不向きである。プリモルスカヤ・ストリートという海岸沿いの遊歩道はホテルやレストラン、お店などが軒を連ね、遊泳する人や通行人で賑わいを見せる。この通りを西方向に進むと、尖塔がそびえる街のシンボル、海運ターミナルビルが見えてくる。港からは黒海各地に船が出る。開運ターミナルから東へ10分ほど歩くと、ソチ美術館がある。旧ソ連時代の1936年に建設された壮麗な建物で、コレクションはロシアと旧ソ連時代のものなど貴重な作品も多い。

 街の東にあるアルボレタム公園には、広大な植物園がある。50ヘクタールもの敷地に200以上もの植物が生息し、ヒマラヤスギ、アメリカのジャイアントセコイア、オーストラリアのユーカリなど、世界の貴重な植物を一度に楽しめる。公園は南北2つに分かれ、北側の公園は広い植物園が中心で、南側の公園は水族館があるなどユニークだ。
 

  

 ソチ:町の象徴・尖塔がそびえる   ソチ:黒海のビーチで泳ぐが、
    海運ターミナルビル       76歳の老体が痛々しい 
 

 一方、郊外は見どころが多い。先ず、約25km北東にあるアフン山がおススメ。標高600mの展望台からの眺めは抜群で、カフカス山脈や遠くにソチの街並みが遠望できる。この展望台の下には休憩所があり、ここで生後6ヵ月くらいの小さな可愛いトラと仲良く写真を撮った。

 因みに、ソチから東へ50kmほどにアブハジアと言う国(?)がある。グルジアから独立したとされるが、承認しているのはロシアなど5ヵ国で国際法的には認められていない。タクシーで日帰り旅行したが、ビザが無ければ入国できないなど実質的には国だと判断せざるを得ないのが実情だ。 


 ところで、ソチ五輪の主な競技会場は、ソチではなく40kmほど東に位置するアドレル Adlerにある。黒海に臨むこじんまりとしたリゾートで、町に入って先ず目に飛び込んで来たのがアドレル鉄道駅。斬新なスタイルの大きな駅舎がひときわ目立ち、ほぼ完成していた(正式な竣工は2013年10月28日)。この駅から近くのソチ国際空港や、遠くはモスクワまで行ける。

 駅から黒海の方に向かって暫らく進むと、ソチ冬季五輪の中心となるオリンピックパークの建設現場が姿を現した。以前はトマトやキュウリなどの畑があった農村地帯で、村が大変貌しようとしていた。砂塵がもうもうと舞い上がる中で突貫工事が進められ、工事用の車両などが頻繁に出入りしていた。巨大なオリンピックスタジアム、アイススケート場、アイスホッケー場などが姿を見せていたが、来年2月の開催に間に合うのであろうか少々心配な工事の進捗状況であった。競技実施には影響しないそうだが、開幕目前になっても関連施設の工事の一部は未だ終わっておらず、未開業のホテルもあるとか。 


 アドレルから北へ約45kmへ行くと、スキー競技が行われるクラースナヤ・ポリャーナのスキーリゾートに着く。西カフカス山脈に抱かれたソチ国立公園内にある。ムジムタ川を挟んで大きなホテル群がずらりと建ち並び、とても山間の村には見えない。標高が600mほどで、少し肌寒い。ここからロープウェーに乗って競技が行われるローザ・フートルに向かうことが出来るが、あいにく天候が良くないためロープウェーは運休していた。

 ワールド・トラベラーが心配した工事遅延もその後のプーチン大統領をはじめロシア側の頑張りで、何とか開会式には間に合いそう。テレビや新聞などの報道で見る限りは、大丈夫のようだ。唯一の心配はボルゴグラードで続いた自爆テロの連鎖反応や、競技会場があるアドレルがアブハジアに隣接していることだ。グルジアから独立したと主張するアブハジアは、ロシアが実効支配する複雑な現実を無視はできまい。単なる杞憂で終わることを願う。
 

     −−− アドレルのオリンピック公園のスタジアム −−−

  

  2013年7月に突貫工事中の       完成間近かのスタジアム
  現場を訪れたワールド・トラベラー    (ネットより転用・加工済み)

      −−− クラースナヤ・ポリャーナの風景 −−−

  

 2013年7月に現地を訪れた筆者   冬季のクラースナヤ・ポリャーナ 
                     (
ネットより転用・加工済み)
 
 大国ロシアの威信をかけた史上最大の冬季オリンピックで、日本勢はいくつメダルを獲るのであろうか?特に10代の若手の活躍は勿論のこと、スキージャンプのアラフォー男、葛西紀明選手の執念にも期待したいものである。2020年の東京五輪・パラリンピックに勢いをつけるためにも、選手諸君の悔いを残さない健闘を祈念したい。

 

追記

 開催年の2014を引用し、2014年2月7日の20:14、即ち午後8時14分(日本時間8日午前1時14分)にフィシュト五輪スタジアムで開会式が始まった。眠たい目を擦りながら、テレビに釘付けになった。ロシアらしいスケールの大きく且つ芸術文化性が豊かな雰囲気の中で名物の入場行進が始まり、日本の選手団113人を含め約2900人の選手などが華やかに登場した。

 87ヵ国・地域の中には選手がたった一人参加のところもあり、初出場の国が7つもあった。ドミニカ、ジンバブエ、トーゴ、東ティモール、パラグアイ、トンガ、マルタの7ヵ国で、寒い冬の祭典とは縁遠い南国の参加もあり実に多彩だ。勿論、世界制覇の旅を成就しているワールド・トラベラーにとっては、すべての参加国・地域を訪問済みで現地を熟知しているので、入場行進が楽しくてしようがなかった。 

 87ヵ国・地域に加え、オヤッと思う国があった。インドで、なんと個人資格の参加である。同国から参加した選手3人はインド代表としてではなく、「独立参加」であった。三色のインド国旗を掲げることは禁止され、旗手は五輪旗を持って行進した。その理由は、一昨年に国内の国際競技場などの発注を巡り大型汚職疑惑が浮上したため、インド五輪委員会が国際オリンピック委員会からナショナル委員会の地位の一時停止処分を受けたのである。インドの民放テレビなどは「インドは国際舞台で恥をさらした」などと報じた。

 

 実施種目は冬季史上最多の7競技98種目と豪華だ。様々な問題があっても、少なくとも雪と氷のスポーツ祭典開催中はテロなどの最悪の事態が起こらないで平和裏に終わるよう強く切望したい(2月8日)。
 

 −−開会式が行われたフィシュト・オリンピックスタジアム−−

    (NHK放送とインターネットより転用・加工済み)

   

 オリンピックスタジアムの中  花火打ち上げ時のスタジアムの外

 
    
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 ワールド・トラベラーが館長を務める世界の人形館では、265カ国・地域の民俗人形、紙幣とコイン、仮面、壷、置物、絵画、木彫り、地球儀、時計、照明ランプ、絵皿、万華鏡などを多数展示しています。ご興味ある方はご遠慮なく、お気軽にご来館下さい。慈善活動につき、入館料は無料です。但し、セキュリティなどのため、下記要領で必ず予約をお願いします。
  TEL:04−7184−4745又はEメール:
ko-yasu@maple.ocn.ne.jp

 

   −−− 国境の無い平和な「世界の人形館」の館内風景 −−−

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   メインホール   民俗人形:中南米等コーナー   地球儀コーナー
 

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