世界の人形館からの夢メッセージ

夢と寛ぎを紡ぐワールドスクエア
クリミアの攻防 ― 麗しきクリミア半島への旅に想う
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 第11回冬季パラリンピック・ソチ大会が昨7日(日本時間8日未明)開幕し、開会式にはプーチン大統領も姿を見せた。ウクライナ問題もあり我が政府関係者の出席が微妙であったが、結局文部科学副大臣の櫻田義孝氏が派遣された。同氏はなんとワールド・トラベラーが常日頃懇意にしている衆議院議員で、筆者の講演をいつも熱心に聴講される御仁である。
 米国と欧州連合(EU)はロシアが軍事介入してウクライナを脅かしているとして制裁の共同歩調を取ろうとするのに対し、北方領土問題も抱えるためロシアとの関係維持も重要な我が日本は珍しく慎重である。ウクライナを挟んで睨み合う両陣営の板挟みになった感じだが、日頃は言いたくても言えない同盟国(?果たして本当にそうであろうか)米国に対し、この際本音を吐露する絶好の機会かも知れない。副大臣のソチへの派遣はある程度両方に顔を立てるソツ無い手法のようだが、この際は思い切って発想転換してはどうか?四面楚歌に近いプーチンに同情すれば、長年停滞(と言うよりも後退の方が適切?)している北方領土問題が一気に進展する可能性があるように思えるがーーー。

 2月24日付の幣ブログ「
政権崩壊したウクライナへの懐かしき旅」で取り上げたウクライナのヤヌコヴィッチ政権の崩壊は、前大統領がロシアへ亡命後に思いがけない展開になった。ロシア系住民が6割も占めるウクライナ南部のクリミア半島が、軍事的にロシア軍の支配下に入ったことである。ロシアが堅持する基本的な外交姿勢とも言うべき南下政策の前線基地がクリミア半島で、ソ連崩壊後にウクライナ領になってもクリミア半島の南端にはロシア黒海艦隊基地になっているバストポール港がある。同半島はロシアの影響力がウクライナのいかなる地方より強く、ロシア系と見られる武装勢力が自治共和国議会の建物を占拠して「クリミアはロシアのもの」という垂れ幕を掲げる。ロシア系住民の保護を大義名分にロシアが軍隊を本格的に投入すれば、の21世紀版の「第二次クリミア戦争」の勃発が懸念される。
 さらにウクライナ南部のクリミア自治共和国が議会で、ロシアへの帰属を問う住民投票を3月16日に行うと決定した。予定通り投票が行われれば、ロシア編入の支持が過半数を占めるのはまず間違いでなかろう。クリミアの将来を決めるのは半島の住民とプーチン氏は言う。しかし、民族自決を利用したロシアへの併合が本音ならば、我が国が早期にケリを付けたい北方領土問題の交渉は、相手がしたたかなだけに手強く容易ではなかろう。



                   (インターネットより転用・加工済み)

 ここでクリミアに就いて、少し触れてみたい。大陸にぶら下がるような感じのクリミア半島の北端は、幅がわずか5〜8kmほどの地峡によって大陸と繋がる。また、半島の東端にはケルチ海峡があり、対岸はロシア領のタマン半島である。この半島を南東の方向におよそ500km進むと、今冬世界の耳目を集めているソチに到達する。意外に近いのに驚く。緯度的には北海道の網走と同じ高緯度だが、気候は温暖だ。半島の面積は約2万6000k屬如長野県の2倍の広さだ。住民は多数派のロシア系が60%を占め、ほかにウクライナ系が約25%、スンニー派イスラム教徒が多いクリミア・タタール人約15%がいる。
        
 歴史的には、古くは古代ギリシャの植民地となり、近代では19世紀中葉のクリミア戦争、1945年2月のヤルタ会談などが知られる。国土面積が約1707万k屬肇瀬鵐肇弔帽大にも拘わらず、領土問題になると特に厳しくなるのはクリミア戦争の敗北による学習経験によるのではなかろうか?英仏やオスマン帝国などの同盟軍に敗れたロシアは、国力強化のために管理と維持の負担が大きかったアラスカを僅か720万ドルで米国に売却した。しかし、その不毛の地と考えられていたアラスカが後に金鉱が発見され、石油やガスが豊富で、軍事戦略的にも冷戦時に敵対するアメリカに貢献するとは思いも寄らなかったであろう。きっとロシアは臍を噛んだに違いない。

 さて、前置きが長くなったが、本題のクリミア半島への旅のお話をしよう。2001年7月にウクライナ、ベラルーシ、モルドバの3カ国を周遊した時に訪れた。ウクライナの首都キエフから空路でクリミア半島の中心都市シンフェローポリに着き、昼食後に人口約34万人のクリミア自治共和国の首都を小観光した。その後「クリミアの真珠」と呼ばれるヤルタに向かい、車で山越えして1時間半ほど走り、黒海沿岸の保養地ヤルタに着いた。

      −−− シンフェローポリ市内を散策する筆者 −−−

 

 黒海に突出した温暖なクリミア半島は、亜熱帯のさんさんと注ぐ陽光下、背後に起伏の激しいクリミア山脈の山並み、前方に紺碧の黒海が広がり正に風光明媚である。人口約8万人のヤルタのメインストーリートは賑やかな海岸通りで、お店やカフェなどが並ぶ。ビーチのほうを見やるとストーンビーチを黒海の波が洗い、一幅の絵のように美しく一瞬地中海ではないかと錯覚するほど。試しに泳いでみたが、小石だらけで歩き難く長居する気にはなれなかった。どうも遊泳より日光浴を楽しむほうが良さそうだが、日差しが強いので要注意。意外に良かったのが夜のヤルタ。リフトに乗ってダルサンの丘に登ると、煌めく夜景が堪能出来る。また、港の近くには多数の夜店ができ、イルミネーションが綺麗な遊園地になり家族連れで賑わっていた。

 クリミア半島観光のハイライトは、実はヤルタの近郊に多い。先ず、ヤルタ港から船に乗って40分ほど行くと、クリミヤ半島を代表する観光名所のツバメの巣に着く。アイ・トドール岬先端の黒海を見下ろす崖っぷちに、美しい白亜の宮殿がせり出すようにして建つ。ヤルタの名を世界に知らしめたリヴァーディア宮殿は、帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世の夏の別荘として建てられ、1階はヤルタ会談当時の様子が再現されている。この会談は1945年2月4日〜11日、アメリカのルーズベルト大統領、イギリスのチャーチル首相、ソ連のスターリンの3首脳が集まって行われた。その際、第二次世界大戦後のヨーロッパの問題とソ連の対日参戦を決める協定が結ばれた。
 ヤルタ市内から南西16kmに富豪ヴォロンツォフ伯爵のアルプカ宮殿があり、博物館として公開されている。北側はチューダー様式の外観だが、その反対の南側の黒海に面した外観はイスラム風のドームがあり、イスラム様式が対照的でなかなか興味深い。

 一方、市内から北西37kmにあるバフチサライは、1783年にロシア帝国に併合されるまではモンゴルの末裔クリミア・ハーン国の首都であった。見どころはハーン(支配者)が暮らしたオスマン・トルコ風の宮殿、ハーンの宮殿で、16世紀前半に建てられた。ハーンたちは約300年間ここで暮らし、1917年ロシア革命時にはタタール人たちが集まりクリミア共和国の独立宣言したが、革命軍の攻撃で挫折した。鉄の門や涙の泉など、イスラム世界が広がる宮殿は、ヤルタが持つ地中海的なリゾート地のイメージとは全く違った多様な側面を知るためにも、ぜひ一見の価値がある


 
ヤルタ会談があったリヴァーディア宮殿   ヤルタ:黒海のビーチで泳ぐ
                       ワールド・トラベラー

  
 美しいツバメの巣で    アルプカ宮殿   バフチサライのハーン宮殿 

 クリミア半島での観光を終えた後、シンフェローポリから夜行列車に乗って「黒海の真珠」と称えられるオデッサに向かった。山がちなクリミア半島を出た後、車窓を眺めると一面のヒマワリ畑が延々と続き、盛夏の平坦な大地を華やかに彩っていた。約14時間後に目的に着き、久し振りの列車の旅を楽しんで良き想い出になった。

 逼迫するウクライナ情勢を巡る米国やEUの共同制裁の動きに対し、ロシアがウクライナ向けの天然ガス輸出を停止する可能性に言及したことで、過去度々あった両国の「ガス紛争」が再燃する恐れも出てきた。実際にガス輸出がストップすれば、ウクライナ経由でロシア産ガスの供給を受けている欧州諸国への影響も必不可避であろう。ロシアの強硬姿勢は対ロ制裁を決めたEUへの対抗措置という意味もあり、ロシア産ガスに依存せざるを得ないEU側のほうこそシッカリした対応を迫られそうである。
 ウクライナ問題の関係国は各々言い分あるとしても、過去最多の45か国550人近い選手が参加しているパラリンピックが3月16日に無事にフィナーレを迎えることを切に祈念したい。もちろん、我が日本選手の健闘を祈るのは言うまでもない。


追記

 16日に予定通り無事に終幕を迎えたソチ・パラリンピックと入れ替わるようにして、クリミア自治共和国で住民投票が行われた。先住民族のタタール人の投票ボイコットはあったものの結果は予想通りで、約97%の圧倒的な賛成でウクライナからの独立とロシアへの編入が承認された。米国やEUから次々と制裁を受けつつあるロシアのプーチン大統領は、最終的にロシアへの併合、或は実効支配下に置くクリミア共和国として独立を認める、いずれを選択するのであろうか? 
 もし、後者になれば、国際的には広く承認されていないが、グルジアから袂を分かったアブハジアや南オセチア、モルドバから分離した沿ドニエストルのような半独立国家誕生になるのであろう。いずれにせよ、今後同大統領の決断が最も注目される。
 
 一方、対ロ制裁の強化を検討中の欧米諸国に歩調をそろえ、我が日本も制裁実施を検討中のようだが、北方領土問題を抱え家庭の事情が違う我が国としては慎重な対応が望まれる。もし対応を誤れば、若干糸口が見えてきた北方領土の返還交渉も遠のくであろう。(3月17日)


 
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筆者(ペンネーム:高やすはる)が著した本が文芸社より発売されています。
 書名は「私はワールド・トラベラー 世界257ヵ国・地域を旅した男」、 定価は本体1、500円+税。書店でお買い求め、又は注文できます。また、楽天ブックスやアマゾンなどのインターネット・ショッピングもできます。
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主なテーマ世界中の絶景と世界遺産、危険な地域、少数民族との出会いやグルメを紹介しつ つ、元・商社マンならではの鋭い洞察力と豊かな知見でチェルノブイリ原発事故の 国々、恐怖の拘束を受けたリビア、タックス・ヘイブンの裏表、ドバイ今昔物語、尖閣 諸島と世界の実効支配、北朝鮮問題の根源、アルジェリア人質事件などを読み解き日本の将来と外交を憂うなど、異色の世界旅行記です。

  尚、本書は単なる旅のガイドブックではありません。日本の将来を憂い、特に三流とも揶揄される日本外交に対し、ズバリ直球でもの申す本物志向の提言書でもあります。是非ともご愛読のほど宜しくお願いします。    


 
     表紙カバー                    口絵            


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